2025年7月24日に、キヤノンからEOS R1向けの最新ファームウェア(Ver.1.1.2)が提供開始となりました。
今回のアップデートには、AF性能の向上や撮影をサポートする便利な機能がいくつか追加されています。
中でも特にプロレスを撮影する視点から注目したいのが、AFの「ネット越しモード」と「プリ連続撮影」です。
「ネット越しモード」はテニスなどの細かいネットを想定した機能ですが、「はたしてプロレスの太いリングロープでも有効なのだろうか?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、公式に発表されている情報を元に、これらの新機能がプロレス撮影というフィールドにおいて、どのような可能性を秘めているのかを探っていきます。
注目機能①:「ネット越しモード」はリングロープ越しの撮影に有効か?
プロレスのリングサイド撮影で、永遠の課題となるのがロープ越しの撮影です。
R1はオートフォーカスの追従性能が粘り強く設定できるため、狙った選手にピントを合わせているときにロープが視界を遮っても、狙った選手をそのまま追い続けてくれることが多いです。
但し、それは100パーセントではなく、ごく稀にロープやリングサイドにいる人にピントがズレてしまうこともあります。
今回、実装された「ネット越しモード」は、ネットの目が比較的細かいバレーボール、バドミントン、サッカーに向けてリリースされた機能ですが、プロレスのロープ越しの撮影に応用できる可能性があります。
もしこの機能がプロレス撮影で使えるなら、リングサイド最前列で撮影するときに、ロープ越しで狙った被写体が激しい動きをしていても、ピントがズレることなく快適に撮影できるようになるかもしれません。
注目機能②:「プリ連続撮影」で決定的瞬間を捉える可能性
「プリ連続撮影」とは、シャッターが押された瞬間の写真だけでなく、その直前(最大0.5秒前)までさかのぼって、記憶していた映像を写真として記録してくれる機能です。
シャッターを押すのがコンマ数秒遅れても、撮りたかった最高の瞬間を失敗なく写真にしてくれるお助け機能とも言えます。
今回のアップデートが提供されるまで「プリ連続撮影」を1回使うと、一律で20枚の写真を記録していました。
「プリ連続撮影」が一律20枚の設定だった場合、 RAWで試合中に何度も「プリ連続撮影」を使うと、膨大なデータ消費量となり、CFexpress の空き容量をどんどん食い尽くしてしまう可能性があります。
このデータ消費量がネックとなり、「プリ連続撮影」を使いたくても敬遠されていた方もいたかもしれませんが、20枚の設定を10枚や5枚といった枚数に変更すれば、「プリ連続撮影」を使いつつ、消費するデータ量も最低限に抑えることができるかもしれません。
撮影の表現を広げる、その他の新機能(流し撮りアシストなど)
流し撮りアシスト
また、R1限定で「流し撮りアシスト」機能が実装されました。
「流し撮りアシスト」は、流し撮りの”上手な振り方”をこっそり手伝ってくれる、運転支援システムのような機能です。
例えば、走っている車(被写体)を撮るとき、自分も車と同じスピードでカメラを水平に動かしながら撮影する技術です。背景だけが流れて、スピード感のあるカッコいい写真が撮れます。
こちらの「流し撮りアシスト」も、プロレスの入場シーンなどで応用できる可能性があります。
ファインダー表示優先モード
「ファインダー表示優先モード」は、「カメラを構えた瞬間の、ほんのわずかな表示のタイムラグを無くし、即座に撮影に入れるようにする機能」です。
R1限定の新機能で、今まで利用されてこなかった背面の左下になる四角い背面センサーを利用しています。
通常、写真撮影をするとき、私たちがファインダーを覗こうと顔を近づけると、センサーが反応してファインダー表示に切り替わります。
これは便利なのですが、「顔を近づける→センサーが反応→表示が切り替わる」という手順を踏むため、コンマ数秒のわずかなタイムラグがありました。
今回搭載された「ファインダー表示優先モード」をオンにすると、プロレス撮影の場合、試合の流れを読んで「次に来る!」と予測し、パッとカメラを構えた瞬間に背面センサーが作動し、表示の遅れなくファインダーに映像が映し出されます。
その他の細かな改善点
上記の機能を含めて、今回リリースされたファームウェアの内容を以下にまとめます。
主要な新機能
- ネット越し撮影への対応: AFのCase設定に、ネット越しの被写体撮影に適した「Case スペシャル」を追加。
- 流し撮りアシストの追加: 流し撮りの成功率を高める撮影補助機能を追加。
- プリ連続撮影の枚数設定: プリ連続撮影で記録するコマ数を1枚単位で設定可能に。
- ファインダー表示優先モードの追加: ファインダーの表示レスポンスを最速にするモードを追加。
撮影ワークフロー・使いやすさの向上
- フリッカーの自動検知: 100/120Hzのフリッカー(照明のちらつき)をライブビュー中に自動で検知。
- レーティングとプロテクトの連携: 画像に★評価を付けると、同時に削除保護(プロテクト)も設定可能に。
- ボタンカスタマイズに「機内モード」追加: 任意のボタンに、通信機能を一括OFFする「機内モード」を割り当て可能に。
- ストロボ使用時の露出シミュレーション: ストロボを使った際の写真の明るさを、撮影前にシミュレーション表示可能に。
カメラの基本性能・信頼性の向上
- パスワード機能: 電源ON時にパスワード入力を要求するセキュリティ機能を追加。
- 単体でのファームウェア更新: カメラ本体だけでインターネット経由でのファームウェア更新に対応。
- 大容量カードへの対応: 8TBまでのCFexpressカードに対応。
- 動画AFの追従性改善: 動画撮影時、ピントが合いにくい被写体に対するAFの追従性が向上。
プロフェッショナル・リモート機能の強化
- FTP転送順の変更: 音声メモ付き画像をFTP転送する際、先に音声メモから転送するように変更。
- リモートアプリ「CR-A100」の機能追加:
- プリセット機能にフォーカス位置を登録可能に。
- リモート撮影時に、カメラの撮像フレームレートを下げる設定を追加。
- ソフトウェア開発キット(EDSDK/CCAPI)の機能追加。
不具合修正(安定性の大幅な向上)
- Err70(エラー70)に関する多数の修正:
- Bluetooth通信中の干渉が原因で発生する現象。
- 「高速連続撮影+」の繰り返しが原因で、ごくまれに発生する現象。
- 起動直後の電子シャッター撮影で、ごくまれに発生する現象。
- 特定の動画設定(FHD 239.8Pなど)での撮影中に、ごく稀に発生する現象。
- 「プレ記録」と「image.canonへの自動転送」の併用で発生することがある現象。
- その他、特定の操作の組み合わせで発生することがあった複数の現象を修正。
- その他の修正:
- プリ連続撮影後にモニターが低輝度表示になり、操作不能になることがある現象を修正。
- HDMI出力とEOS Utilityのリモート撮影を併用すると、動画記録ができないことがある現象を修正。
- サイズの大きいRAW画像がCamera Connectで転送できない現象を修正。
- Wi-Fi 7対応ルーターに接続できない現象を修正。
まとめ:新機能をマリーゴールドの現場でどう試したいか
今回リリースされた新機能のうち、次回観戦予定の大会(7.29 新宿FACE)では、最前列でプロレス撮影をする予定のため、「ネット越しモード」や「プリ連続撮影」を使ってみたいと思っています。
但し「プリ連続撮影」と「高性能フリッカーレス機能」に関しては、両方の機能を有効にすることができず、どちらかしか使えないため、新宿FACEの会場を見て現場でどちらの機能を使うか判断したいと思います。
もし「ネット越しモード」がプロレス撮影に応用できた場合、とてつもなく今後のプロレス撮影が快適になりそうな予感がしています。
実際に使ってみた感想は、後日レビュー記事でご紹介するつもりです。